ウクライナ戦争と安倍総理殺害【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」45
◆総理殺害とナショナリズムのねじれ
ウクライナ戦争は、本年2月の勃発より半年を経て、ますます長期化の様相を呈してきました。
同国の東部、および南部地域を制圧したロシアは、住民投票による当該地域の併合をもくろんでいる模様。
「われわれが勝手にウクライナの領土を奪っているのではない。現地の住民がロシアへの併合を望んだので、その意向を尊重したのだ」という形にするわけです。
当然、ウクライナ側はこれら地域、とくに南部の奪還をめざす。
ゼレンスキー大統領は8月15日、ロシアが2014年に併合したクリミアの「脱占領」に向けて、諮問機関を設置するにいたりました。
そんな中、わが国では7月8日、憲政史上最長の任期を誇った安倍晋三元総理(以下「安倍総理」)が、選挙遊説中、銃撃されて亡くなる事件が発生。
7月22日、政府は国葬を閣議決定したものの、「国を挙げて死を悼む」という雰囲気にはなっていません。
事件をきっかけとして、韓国で創設された新興宗教・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)や、その関連団体と、安倍総理が浅からぬ関係を持ち、選挙でも支援を受けていたことが浮上したのです。
統一教会は、いわゆる「霊感商法」や、信者による多額の献金、大規模な合同結婚式の開催などで世を騒がせ、社会問題となった団体。
発祥の地が韓国のためか、教義には反日的な要素も目立ちます。
日本は「サタン(悪魔)の国」であり、とりわけ朝鮮にたいしては植民地支配の罪を犯したため、それを償うためにも信者は貢がねばならないという次第。
片や安倍総理と言えば、保守派のナショナリストと目されてきた人物。
ナショナリズムとは自国の利益、および自国民の幸福を重視する理念のはずです。
それが反日的な教義を掲げ、日本で社会問題を引き起こした宗教団体と懇意にしていたのですから、わが国のナショナリズムとは一体何なのか、訳が分からなくなるではありませんか。
さらに安倍総理の姿を見て、自民党の議員の間に「統一教会と関わって何が悪い」という開き直りが広まったとも指摘されています。
自民党が与党として国政を担っている、つまりナショナリズムを体現する責任を負っているのを思えば、由々しき話と言わねばなりません。
しかるにお立ち会い。
「ウクライナ侵攻とナショナリズムのねじれ」(第43回)で論じたとおり、ウクライナ戦争をどう評価するか、あるいはこの戦争がなぜ単純な解釈を許さないかをめぐっては、ナショナリズムの問題が大きく関わっています。
わけても重要なのが「ナショナリズムと帝国主義・覇権主義は、一見すると対極にあるようだが、両者を明確に区分することはできない」という、理念的なねじれの存在。
だが安倍総理殺害の背後にも、ナショナリストに率いられた政権党が反日的な宗教団体と手を組んだという理念のねじれがある。
ならば「ウクライナ戦争をどう捉えるか」は、われわれ日本人にとり、「安倍総理殺害をどう捉えるか」と、根底でつながったものになるのではないか?
先へ進みましょう。
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